Unityによると、2024年の複数機種対応ゲームは2021年比で40%増えた。その後、SonyはPlayStation発売作品を初めてXboxに投入した。ただし、独占戦略の後退は表明していない。

要点

  • Helldivers 2がPlayStation発売作品として初めてXboxに進出することは、Sonyが独占戦略そのものを捨てず、作品ごとに独占の採算を判断できることを示している。
  • 多人数参加型ゲームでは、締め出した顧客が失われた販売機会にとどまらず、不在の仲間や交流相手、継続課金の担い手にもなり得るため、独占の損得が変わる。
  • 異なるゲーム機の利用者をつなぐ仕組みが整い、幅広い利用者に届ける戦略を実行しやすくなった。Epicが機種間の接続負担を軽減する一方、Unityによると2024年の複数機種対応ゲームは2021年比で40%増えた。
  • Microsoftは、新作を作品ごとに審査し、多人数参加型ゲームは複数機種で展開するという判断基準を明示している。
  • 販売先を広げればゲームの利用と収益は増え得るが、基盤運営会社にとっては、自社機器の差別化や、利用者情報、販売、定額サービスを直接握る力が弱まる恐れがある。

家庭用ゲーム機市場では長らく、ゲームをどこで売るかと、誰を利用者網に参加させるかが一体の判断だった。基盤運営会社は作品に資金を出すか自ら発売し、自社機器だけで遊べるようにする。その見返りとして、他社との差別化を得てきた。ゲームが本体の販売を促し、本体がゲームに利用者を送り込む関係だ。

多人数参加型ゲームでは、この取引条件が変わる。締め出された利用者は、単に1本分の販売機会を失わせるだけではない。作品によっては、参加しなかった仲間や対戦相手、交流相手であり、継続的に支出する顧客でもある。機種をまたいで利用者をつなぎやすくなるほど、排除による損失も見えやすくなる。

この計算が変わるのに、誰かがゲーム機独占の終焉を宣言する必要はなかった。開発支援会社が障壁を下げ、開発会社はより多くの機種に作品を投入した。Microsoftは新たな判断基準を明示し、Sonyは利用者網の大きさ自体が商品価値を左右する作品で、従来の販売境界を越えた。

Sonyは境界を越えたが、原則を改めたわけではない

1作品の発売で示されるのは、実行できるという事実であって、新たな方針ではない。Helldivers 2はPlayStation全体の販売戦略を転換する先例ではなく、継続運営型の多人数参加作品に限った例外にとどまる可能性がある。

Xbox版を出せば、PlayStation本体を買わない顧客からも販売収入を得られる。その顧客はゲーム内の活動や交流、継続的な支出も増やし得る。

別の継続運営型多人数参加作品であるConcordへの対応は、Sonyが作品ごとに全く異なる判断を下し得ることを示す。Sonyは2024年9月に販売を停止し、店頭から作品を引き揚げ、返金に応じたうえで運営を終了した。販売先だけが終了の原因だったとは断定できないが、同じ発売会社の看板を掲げる作品でも採算が急速に分かれ得ることは分かる。

Sonyの作品群には、本体選びを左右するゲーム、幅広い利用者を必要とするゲーム、運営継続に見合う成果を出せないゲームが混在する。販売先を一律に決めれば、性質の異なる事業すべてに同じ答えを押しつけることになる。

Helldivers 2が重要なのは、Sonyがゲームそのものの価値と、Xbox利用者を締め出す価値を切り分けた点にある。前者が後者を上回ったとしても、作品群全体で独占の価値がなくなるわけではない。

機種間プレイの整備で、利用者層の拡大が現実的な選択肢になった

基盤運営会社が方針を変えるより先に、開発支援会社が動いた。2023年、Epic GamesはEpic Online Servicesの機種間プレイ支援機能を拡充し、PCだけでなくPlayStation、Xbox、Switchにも対応させた。これにより、開発会社は異なるゲーム機の利用者をつなぎやすくなった。ただし、Epicが移植作業や審査要件、商取引条件、継続運営の負担までなくしたわけではない。軽減したのは、異なる仕組みの利用者同士を接続するという特定の負担だ。

発売会社が機種間プレイに対応せず競合機種へ展開すれば、ゲームに新たな市場が加わる。一方、その機種を既存の利用者網につなげれば、同じ多人数参加サービスへの参加者も増える。参加者の拡大によって対戦相手を集めやすくなり、交流を伴う遊びが続きやすくなる作品では、既存利用者の体験も改善する。

機種ごとの集団が分断されたまま、交流が制限されている場合や、すでに必要以上の参加者がいる場合は、新規利用者が加わっても効用は小さい。しかし、機種を越えて対戦や協力、交流関係の維持ができるなら、対応機種は単なる新しい売り場ではない。同じサービスへの別の入口になる。

Epicの仕組みが戦略を決めるわけではない。実装負担が下がることで発売会社は、新規参加者による対戦成立率、利用時間、継続率、支出の改善が、移植費や運営費に見合うかを検討しやすくなる。

Unityによると、2021年から2024年にかけて複数機種対応ゲームは40%増加

開発会社はすでに大規模な対応を進めていた。Unityによると、複数機種対応ゲームは2021年から2024年に40%増えた。これは単一の基盤運営方針を示す発表ではなく、多数の開発会社による発売判断を集計した数字だ。

Unityの集計だけでは、大型作品の開発費や宣伝費の上昇がこの変化を引き起こしたとは証明できない。確実に言えるのは、異なるゲーム機をつなぐ仕組みが改善するなか、複数機種での発売が大幅に増えたということだ。

Xboxは作品群ごとの判断基準を明示した

この業界で最も明確な先例を示したのはMicrosoftだ。報道によると、同社は2024年に独占作品を例外として扱い、複数機種にまたがるXboxの操作画面を開発していた。2026年6月までには、Xbox上級副社長のMatt Bootyが、より具体的な基準を示している。新作は作品ごとに審査し、多人数参加型ゲームは複数機種で展開するという方針だ。

Microsoftの基準は、参加者数が利用の活発さと継続収益を左右する領域で、幅広い利用者を確保するものだ。利用制限によって潜在的な仲間や対戦相手、支出者を利用者網の外に置けば、多人数参加サービスが失うものは販売収入だけではない。

Microsoftには、多くの発売会社以上に、この損失を大規模な作品群全体で測る理由がある。Activision Blizzardを$69 billionで買収したことで、販売先を判断しなければならない作品が増えた。

Microsoftは作品群全体を通じ、多人数参加作品を利用者数、継続率、支出で評価できる。一方、1人用の独占作品は、それが生み出す本体需要や自社経済圏への参加で評価できる。一律の基準では、この違いを捉えられない。

参入を拒む堀から、経済圏を運営する力へ

Sonyが販売先を広げても、PlayStationの存在意義がなくなるわけではない。ただし、作品への入口以外の要素でも競う必要がある。

人気作品を複数の機器で遊べるなら、差別化の軸は周辺の仕組みに移る。利用者情報、本人性、交流機能、販売、定額サービス、安定性、そして明確な違いを保つ自社作品だ。そのときゲーム機は、作品を閉じ込めた1つの門というより、いくつもの料金所を備えた1つの経済圏に近づく。

PlayStation Networkでは、複数の機能が一斉に止まったことで、その仕組み全体が可視化された。2025年2月の障害は約24時間続き、利用者情報の管理、ゲームと交流機能、PlayStation Video、Store、Directの各サービスに影響した。この障害が示したのは、現在の基盤が単なるソフトウェアへの入口ではなく、本人性の確認と取引を担う層まで含んでいるということだ。

それでも、機器への需要は依然として大きい。Nintendoは2027年3月までにSwitch 2を16.5百万台販売すると予想している。関係者によると、同社は提携先と供給会社に約20百万台の組み立てを求めた。こうした数字は、機器が単なる飾りの樹脂製品になるという単純な見方を否定する。

ゲームが複数の仕組みに広がれば、購入者が機器を選ぶ基準も変わる。Helldivers 2を遊ぶのにPlayStation本体が不要になれば、Sonyは周辺の仕組みか、引き続き独占する別の作品で選ばれなければならない。Nintendoは機器とソフトウェアの違いによって選好を生み出せる。Sonyは本人性と取引を担う仕組みの信頼性を保つ必要がある。いずれの強みも、すべてのゲームに同じ販売境界を設けることを必要とはしない。

Sonyはゲームの活況を得る一方、PSNの価値を失い得る

SonyにとってXbox版は、販売収入に加え、購入後の支出やサービスへの新たな参加者をもたらす。その利用者が部隊の欠員を埋め、PlayStation利用者の継続参加を促す可能性もある。Sonyが本体をもう1台売ったわけではなくても、ゲームには恩恵が及ぶ。

販売本数だけでは、この効果を捉えられない。SonyはXbox版によって活動中の利用者が増えたか、対戦が成立しやすくなったか、既存利用者の継続率や支出が伸びたかを確認できる。ただし、その成果は必ずしもPlayStation本体ではなく、Helldivers 2に帰属する。

一方、SonyはPlayStation Networkを通じた顧客関係を失う恐れがある。Xboxでも遊べることで購入者がPlayStation本体は不要だと判断すれば、Sonyはその顧客の利用者情報にひもづく活動、Storeでの取引、定額サービス収入、将来の購入を取り込む機会を手放す。

複数機種対応ゲームが40%増えたというUnityの数字は、業界が下からこの採算表に近づいてきたことを示す。Sony初のXbox向け発売は、基盤運営会社が上からその帳簿を開いたことを意味する。壁は残っている。ただし、そこに設けられた1つの門には、いまや値札が付いている。

Sonyが作品ごとに分けた判断

  • 2024年9月4日 — SonyはConcordの販売を停止し、店頭から引き揚げて返金に応じた。
  • 2024年9月6日 — SonyはConcordの運営終了を予定し、多人数参加型ゲームとして事実上の閉鎖を決めた。
  • 2025年7月4日 — Helldivers 2がPlayStation発売作品として初めてXboxで発売されることが確認された。

よくある質問

SonyはPlayStation独占をやめるのか

違う。PlayStation発売作品を1本Xboxに投入したことで、Sonyが従来の境界を越えられることは示された。ただし、作品群全体の方針転換を意味するものではない。

多人数参加型ゲームが複数機種で発売されやすいのはなぜか

対応機種を増やせば、販売収入だけでなく、仲間や対戦相手、交流相手、継続的な支出も増やせる。機種間プレイによって利用者が同じ網につながれば、対戦の成立しやすさや継続率が改善し、サービスも長続きしやすくなる。

Helldivers 2をXboxで発売すると、Sonyにはどんな利点があるのか

SonyはXbox版の販売収入、購入後の支出、継続運営サービスへの新たな参加者を得られる。参加者が増えれば、既存のPlayStation利用者にとっても遊びやすくなり、利用の活発化につながる可能性がある。

Xboxでゲームを発売することで、Sonyは何を失う恐れがあるのか

購入者がPlayStation本体は不要だと判断すれば、SonyはPlayStation Network上の活動、Storeでの取引、定額サービス収入、将来の購入を取り込めなくなる可能性がある。

機種間プレイが容易になれば、複数機種向け開発の費用はなくなるのか

なくならない。Epicの仕組みは異なる機種の利用者をつなぐ負担を軽減するが、移植、審査、商取引条件、継続運営の負担は残る。