欧州委員会による€890 millionの制裁金は、通常は別々に論じられるGoogleの2つの仕組み、SearchとPlayを対象としている。どちらも入口を開放したまま、その先の経路を支配できる。Searchは外部へのリンクを示しながら、利用者の行動を自社内へ取り込める。Playは外部からの導入を認めながら、その経路に手数料を課せる。アカウント復旧は利用者を守る一方で、特定の本人確認基盤への依存を強める。Geminiは新たな市場のように見えても、実際には既存の端末、アカウント、設備を通じて普及する。入口から目的達成までの全過程が一つの関門になっていると考えれば、こうした矛盾は消える。
要点
- Googleの優位性は、巨大な利用者基盤を持つことだけではない。発見、利用開始、信頼、取引まで、顧客に届く全経路を支配している点にある。
- 欧州委員会が€890 millionの事案でSearchとPlayを結び付けたのは、いずれも形式上は開放を維持しながら、競合の表示順位、到達可能性、導入方法、費用をGoogleが左右できるためだ。
- 本人確認も関門の一部である。アカウント復旧と継続利用の強化は利用者を守る一方、Googleからの移行を、データ、購入履歴、定期契約を含む資産全体の判断に変える。
- Geminiは、検索順位による選別を生成回答へと広げる。利用者が選択肢を見る前に、対話型支援機能が情報源、道具、サービスを選べるためだ。
- 実効性のある規制には、代替経路が認められているかだけでなく、表示されやすさ、手間、継続利用、総費用まで含めて、利用者が実際にその経路を完了できるかを測る必要がある。
Searchはウェブを案内するだけでなく、利用者の行動を組み立てるようになった
検索が案内帳だった時代、問いは単純だった。利用者はウェブ上のどこへ行けばよいのか。情報発信者が目的地を作り、検索結果画面が選択肢を並べ、クリックによって利用者を外部へ送り出した。表示順位は当時から大きな力を持っていたが、役割の境界は明確だった。Searchが道路標識を整え、その先の建物では別の事業者が商売をしていた。
2015年、GoogleはChromeとiOS版Googleアプリを通じて、アプリ内の情報をSearchの検索結果に表示し始めた。これは、SearchとPlayの運用が問題となった2026年のDMA制裁金に先立つこと11年である。目的地にある有用な情報を抜き出して自らの導線上に示すことで、Googleは検索結果画面を、ウェブサイトやアプリに分散する活動を動かす基盤へと変えた。
2017年には、Googleが求人検索の結果を検索画面に直接掲載した。掲載情報はLinkedIn、Monster、Facebook、各社のウェブサイトから集められた。利用者が個々の情報提供元へ移る前に、複数事業者の求人をどう収集し、比較し、表示するかを検索結果画面が決めるようになった。
Googleが左右する問いは、「情報はどこにあるか」から「この場で作業をどう始められるか」へ移った。その結果、情報の記述形式、検索結果の表示方法、掲載条件、掲載位置が、流通を左右する決定事項になった。競合サービスがウェブ上に存在していても、利用者がそこへ到達する前にGoogleの商業条件に直面し得る。
だからこそ、欧州委員会によるSearchとGoogle Playの運用を対象とした€890 millionのDMA制裁金は、一つの構図として捉える必要がある。欧州委員会は、GoogleがSearchで自社サービスを優遇し、Playの規則によって代替サービスへの到達を制限したと主張する。一方は目的地の順位を決め、もう一方はソフトウェアを流通させる。問題とされた行為は異なるが、どちらの場合も、顧客へ近づくための条件をGoogleが設定している。
すべての曲がり角を既存事業者が設計するなら、代替経路は開かれているとはいえない
アプリ配信市場の手数料や外部決済をめぐる議論は、利用者経路の終点から始まりがちだ。しかし、開発者が利用者と取引するには、その前にサービスを見つけてもらい、外部経路を有効にし、利用者の信頼を得て、途中のすべての画面を通過して導入を完了してもらわなければならない。この連鎖の最後だけを形式上認めても、入口の支配は解消されない。
米国の差止命令に対してGoogleが予定していた対応は、この経路を数値で測れるものにした。米国の利用者が外部リンクをたどり、24時間以内にPlay以外から導入した場合、同社は開発者に対し、アプリ1件につき$2.85、ゲーム1件につき$3.65を課す計画だった。リンクと時間制限を組み合わせることで、利用者がPlayを離れた後も、その行動をGoogle経由のものとして特定できる。
同時に、Google Playは単なるダウンロード一覧を超えて拡張していた。Collectionsは導入済みアプリの内容を分類別の画面に表示し、Play Passや選定された媒体コンテンツは、Googleが商品を売り込み、利用者を呼び戻す手段を増やした。導入済みアプリまで販促対象にすることで、どの製品を再び利用者の目に触れさせるかをPlayが決め続けた。
Appleの欧州での事例にも同じ構造が見える。AltStoreはEU域内で100,000件を超えるダウンロードを報告したが、記録された事例では、代替iOS配信市場を導入するまでにおよそ12回の画面操作が必要だった。Appleはさらに、代替配信市場の運営者に€1 millionの信用状を求めた。代替手段は存在していても、実際の利用可能性は、何人が手順を最後まで終えられるか、何社が参入費用を負担できるかに左右された。
開発者が直面する関門は、次の4つに分けて観察できる。
| 段階 | 支配的事業者が決めるもの | 形式上の開放では捉えられないもの |
|---|---|---|
| 発見 | 表示順位、検索結果の形式、情報枠、選定掲載 | 選択肢として掲載されても、ほとんど見られない場合がある |
| 利用開始 | リンク、初期設定、導入手順 | 経路が認められていても、完了する利用者がほとんどいない場合がある |
| 信頼 | アカウントの継続利用、復旧、運営者の要件 | 経路自体は機能しても、安全性に不安を感じたり、運営費が高止まりしたりする |
| 取引 | 決済規則、手数料、経路を特定する時間制限 | 名目上は外部取引でも、既存事業者への通行料が残る場合がある |
各段階は次の段階を強める。目立つ場所に表示されれば利用者が増え、利用者が増えれば利用状況と取引の情報が蓄積され、その実績がさらに目立つ掲載を支える。こうして生まれる市場の関門を握る事業者の影響力は、Googleが競合を全面的に排除しなくても成立する。各段階で自社経路を少しずつ簡単にし、信頼しやすくし、割安にすればよい。
本人確認基盤によって、乗り換えは保有資産全体の判断になる
かつて、サービスのアカウントは個々の製品に付随する利用資格にすぎなかった。しかし、その背後にデータ、定期契約、各種サービスが蓄積するにつれて、関係は逆転した。製品のほうが本人確認基盤に付随する存在になった。同じアカウントでファイル、購入品、動画の定期契約、連携サービスを復元できるなら、一つのアプリをやめることは、もはやそのアプリだけから離れることを意味しない。
Googleが世界展開した生体性判定を伴う自撮り動画によるアカウント復旧は、現在のアカウントがどれほど多くのものを背負っているかを示す。偽造映像の普及によって静止画像だけでは本人確認の信頼性が下がったため、復旧には生身の人物がその場にいることを示す、より強い証拠が必要になる。直接の目的は安全性の向上だが、同時にアカウントの継続性も強まる。
復旧機能の強化は、乗り換えの負担を高める可能性がある。確実に復旧できるアカウントほど、価値あるサービスをひも付ける場所として安心できる。その価値が高まるほど、手放したときの影響も大きくなる。Gmailのアドレス変更を可能にするGoogleの試験機能も、別の方向から同じ構造を示している。利用者は、YouTubeやYouTube TVを含む既存データと連携サービスを維持したまま、@gmail.comのアドレスを変更できる。土台となるアカウントの範囲が強固になったからこそ、表面上のアドレスは交換可能になる。
手数料をめぐる議論では、この種の市場支配力が見落とされる。本人確認基盤は、パスワードを失った場合、端末を不正利用された場合、アドレスを変更した場合に、誰が戻ってこられるかを決める。復旧機能は、定期契約やデータに引き続きアクセスできるかを決める。これらは顧客関係を維持するための基幹設備である。
Googleは、目に見える識別子の下にある継続性を強めた。それは偶発的な喪失から利用者を守る一方、Googleから離れる判断を、個別製品ではなく保有資産全体の問題に変える。
対話型支援機能は、最初の選別を回答の内側へ移す
対話形式のAI回答は、画面の形を変えても、市場への入口をめぐる問題を消さない。どの情報を示すか、どの道具を使うか、どのサービスで作業を完了するか、そもそも選択肢の一覧を利用者に見せるかを、対話型支援機能が決める。
Googleによると、Geminiの月間利用者は5月と7月のいずれも増加した。利用者数だけでは利用の深さまでは分からず、Google自身の調査でも、一部の作業におけるAI利用は表面的な段階にとどまっていた。それでも、何を選ぶかという規則が市場に影響を及ぼすには、すでに十分な規模である。
対話型支援機能は、選択の順序を変える。従来のSearchは候補を順位付きで示し、利用者がその中から選ぶ。これに対し、対話型支援の実行基盤は回答を組み立てる途中で情報源や道具を選び、選別過程の一部を回答の背後へ隠せる。別のモデル振り分け基盤が、どのモデルで依頼を処理するかを決める場合もある。その上で、対話型支援機能と周辺の仕組みが、どの商品、情報、取引を利用者へ届けるかを決める。
Googleの投資額を見れば、その構想が物理的な設備を伴うことが分かる。同社は、第2四半期の設備投資が前年同期比100%増の$44.92 billionに達したのに続き、2026年の設備投資を$195 billion〜$205 billionと見込む。Geminiは、データセンター、モデル、クラウド契約、基本ソフト、端末を通じて動く。それぞれが、サービスをどこへ組み込めるか、どの程度安定して応答できるかを左右する。
Samsungが近く投入するスマートグラスは、同じ構造を身に着ける機器へ広げる。Googleと共同開発され、Android XRとGeminiを中核とするこの製品は、カメラ、マイク、耳をふさがないスピーカー、公称9時間の電池持続時間、個人情報保護機能を新たな接点に加える。基本ソフトと対話型支援機能を身に着ける機器で一体化することで、Googleは利用者が尋ね、見て、行動する瞬間へ近づく。
支配には費用がかかり、完成することもなく、法的な抜け道も残る
どの層にも漏れがあり、Googleの支配には限界がある。利用者は別のサービスを選べる。開発者は他の場所で配布できる。裁判所は出力物に対する権利主張を制限できる。提携企業が展開を遅らせることもある。整備期間中の設備投資が、事業から生まれる現金を上回る可能性もある。事業基盤の力は優位をもたらすが、その優位には、それを生んだ通信網と設備による制約がある。
米国の裁判官がSerpApiに対するGoogleの訴えを退けたことは、明確な境界の一例だ。裁判所は、加工されていない検索結果と集約された検索結果は著作権法で保護されないと判断した。この判断により、Searchの出力への接続をGoogleが支配しようとした一つの手段は封じられた。
大半のAndroid端末でAssistantをGeminiへ置き換えるGoogleの計画は、2025年末という目標を達成できず、2026年へずれ込んだ。Androidの流通力によって導入済み端末の基盤は確保できても、それだけで移行は完了しなかった。初期設定でサービスの場所を確保することはできるが、端末、機能、利用者の期待を新たな仕組みへ移す作業は別に必要だった。
Googleは、AI投資の増加により第2四半期の自由現金収支が$5.9 billionの赤字になったと報告した。20年以上前の株式公開以来、初めての資金流出である。同社の調査では、一部の作業についてAIは広く使われているものの、使い方は浅いことも分かった。Googleには、巨大な顧客接点を整備して数億人の前に置く資金力があるが、すべての用途が同じ速さで定着する保証はない。
それでもGoogleの優位が残るのは、競合企業が発見、流通、本人確認、計算資源、信頼を一から組み合わせなければならない一方、Googleはすでに運営する仕組み同士を結び付ければよいからだ。
規制が調べるべきは許可の有無ではなく、利用者がたどる全経路である
DMAの重要な一歩は、Searchでの表示方法とPlayの規則を、市場への接続を左右する相互に関連した支配手段として扱った点にある。欧州委員会は、Googleが自社サービスを優遇し、顧客が代替手段へ到達する可能性を制限したと主張する。是正策によって競争が変わるかどうかは、規則文書に代替手段が記載されているかではなく、実際の経路で何が起きるかにかかっている。
形式上の選択肢があっても、ほとんど表示されず、利用開始までの手順が長く、継続性が弱く、利用者が離れた後に手数料が発生することはある。許可の有無だけを測れば、最も重要性の低い地点での順守を評価することになる。実際に使える経路かを検証するには、代替手段がどれだけの頻度で表示されるか、何人が乗り換えや導入を完了するか、最終的にどれほどの負担が生じるか、アカウントとデータを引き続き利用できるか、競争に必要な資源を競合企業が得られるかを問う必要がある。
2025年の米国におけるSearchの是正命令は、この問題の一部に別の方法で取り組んだ。裁判官はChromeとAndroidを維持したまま、GoogleにSearchのデータを競合企業と共有するよう命じた。この措置は、流通手段の分離ではなく、競争上重要な資源を他社も利用できる状態にすることを重視した。既存の通信網を解体しなくても、競合企業が、既存事業者の網に蓄積された利用結果を必要とする場合があることを認めたのである。
AI規制において、モデルを利用できるかどうかは市場を構成する一層にすぎない。競合モデルが存在していても、他社の対話型支援機能での掲載位置、携帯端末の基本ソフト、クラウドの処理能力、アカウントによる本人確認、取引経路に依存する場合がある。こうした経路を調べずにモデルの選択だけを求めれば、アプリ配信市場と同じ問題が繰り返される。名称上は代替手段でも、到達するまでの道筋は既存事業者が設計したままになる。
Googleの広告事業は、この循環に並外れた持続力を与える。第2四半期のGoogle広告収入は、前年同期の$71.34 billionから$81.63 billionへ増加した。この収入は、新たな対話型接点を生むデータセンター、モデル、端末への組み込みに充てられる。その接点が増えれば、商業情報を整理し提示する機会もさらに確保できる。€890 millionの制裁金と$81.63 billionの四半期収入は、同じ構造の異なる部分にある。前者が過去の行為に代価を課す一方、後者は次の顧客接点を築く資金になる。
現在の市場支配力は、競合企業が顧客へ届く前に、1社が技術要件を定め、画面を挿入し、本人確認を維持し、道具を選び、通行料を課せる重要な経路が、どれほど多いかによって決まる。
€890 millionの制裁金の背後には、検索結果の情報枠、24時間の手数料計測、およそ12の導入画面、復旧されたGmailアドレス、そして選択肢の一覧より先に届く回答から成る、より大きな関門がある。
Googleの顧客接点における優位が、現実の限界に直面した場面
- 2025年9月3日 — 米国の連邦裁判官はChromeとAndroidを維持する一方、GoogleにSearchのデータを競合企業と共有するよう命じた。流通部門の分割ではなく、競争上重要な資源への接続を確保する措置だった。
- 2025年末 — 大半のAndroid端末でAssistantをGeminiへ置き換えるというGoogleの従来の目標は、完了しないまま期限を迎えた。導入済み端末の基盤と初期設定上の優位だけでは、移行を保証できないことが示された。
- 2026年 — Googleは、大半のAndroid端末におけるAssistantからGeminiへの移行を2026年へ延期した。
- 2026年7月23日 — Googleの調査により、一部の作業ではAIの利用が浅い段階にとどまることが報告された。対話型支援機能を広く提供するだけでは、深い定着につながらないことを示している。
よくある質問
EUによる€890 millionの制裁金がGoogle SearchとGoogle Playの両方を対象とするのはなぜか
欧州委員会が問題視する行為はそれぞれ異なるが、どちらも顧客への到達を左右する。Searchは表示方法と順位を支配し、Playはソフトウェアの流通、導入経路、それに伴う商業条件を支配する。
外部からの導入と決済を認めれば、アプリ配信市場は開かれているといえるか
必ずしもそうではない。Googleは、外部リンクから24時間以内にPlay以外で完了した一部の導入に手数料を課す計画だった。一方、Appleの代替配信市場へ至る経路では、およそ12回の画面操作が必要だったと記録され、運営者には€1 millionの信用状も求められた。
Google Accountはどのように市場支配力を強めるのか
アカウントは、複数製品にまたがるデータ、購入履歴、定期契約、連携サービスへの接続を維持する。復旧機能の改善や、付随するサービスを失わずにGmailアドレスを変更できる仕組みは継続利用を容易にする一方、その利用圏から離れた場合の影響を大きくする。
Geminiは市場の関門をめぐる問題をどう変えるのか
Searchは通常、順位付きの候補を示す。これに対し、対話型支援機能は回答を組み立てる途中で情報源、道具、サービスを選べる。2026年7月のGemini月間利用者が950 millionと報告されるなか、表から見えない選別が大規模に市場への接続を左右し得る。
より強力な是正策では何を測るべきか
代替手段が表示される頻度、導入や乗り換えを完了する利用者の割合、課される費用の総額、アカウントとデータを継続利用できるか、競争に必要な資源が競合企業へ提供されるかを追跡すべきである。