堀の水が目に見えて引いていく要塞、AIが防壁を浸食するなかアンバー色の水位が下がっていく

2月17日、広く拡散された分析がこう主張した――「LLMはバーティカルSaaSを守っていた堀を解体している」。ドメイン固有のソフトウェア企業は、AIが専門的なワークフローを再現できるようになった今、その優位性を失いつつある、と。同日、FigmaAnthropicはCode to Canvasを発表した。Claude Codeを使ってコードをFigmaにインポートし、デザインを生成する機能だ。翌日、FigmaはQ4売上高が3億380万ドル、前年比40%増だったと報告したCanvaのCOOは、2025年末時点で年間経常収益が40億ドルに達したと明かした。堀が崩れているという論考と、堀が育っているという数字が、同じ週に出揃った。

どちらも正しい。問いはなぜかだ。

SaaS堀の論理

バーティカルSaaSへの反論はこうだ。ソフトウェア企業はドメインの専門知識をワークフローに落とし込むことで守りやすいポジションを築いた。リーガルテック企業は弁護士が契約書をレビューする方法を知っている。医療プラットフォームは病院が請求を処理する方法を知っている。UIのパターン、インテグレーション、データスキーマに蓄積されたそのドメイン知識こそが堀だった。

LLMはその堀を溶かす。コンテキストからドメインの専門知識を学べるからだ。企業のデータにアクセスできるAIエージェントは、専門ソフトウェアが必要としていた同じワークフローを実行できる。ドメイン知識はソフトウェアからモデルへと移動する。バーティカルSaaS企業は、どのLLMでも再現できる汎用機能の上に薄いUI層を乗せているだけになる。そこには競争優位がない。

この論理は筋が通っている。カスタマーサポート、データ入力、基本的なリーガルレビューではすでに起きている。だが、ある種のツールが実際に何をしているのかについて、見落としがある。

Figmaが本当に売っているもの

Figmaはデザインの自動化を売っていない。デザインの意思決定が行われ、共有され、反復される協働キャンバスを売っている。製品はワークフローではなく、ワークスペースそのものだ。Code to CanvasがClaude Codeを経由してコードをFigmaにインポートできるようにしたとき、それはFigmaを置き換えなかった。AI生成アウトプットの着地点をFigmaに変えた。

ここに決定的な違いがある。タスクを自動化するSaaS製品と、協働の場を提供するSaaS製品は別物だ。タスク自動化はAIによる代替に脆弱だ――プロンプトで記述できるタスクなら、そのソフトウェアは冗長になる。協働の場は脆弱ではない。価値は実行ではなく共有コンテキストにある——そしてコンテキストはAIが豊かにするほど、場の価値が上がるのだ。

Q4売上高3億380万ドル — 協働デザインキャンバス
2025年末 — テンプレートからアウトプットへのデザインツール
ダイレクト収益事業 — ビジュアルコミュニケーションプラットフォーム

Anthropicとの提携が示すもの

Code to Canvasの仕組みはこうだ——開発者がコードを書き、Claudeがそれを技術者でないチームメンバーがFigmaで確認・修正できるデザインに変換する。AIはデザインツールを置き換えているのではない。デザインツールに供給しているのだ。FigmaとAnthropicの提携が示しているのは、その構造だ。

AIがソフトウェアツールを陳腐化させるという恐怖がある。少なくともデザイン領域では実際に起きていることは逆だ。以前はFigmaを使えなかった開発者が、プログラム的にデザインを生成できるようになった。デザインチームはFigmaで引き続きレビューし、反復し、承認する。コラボレーションの表面積が広がる。AIはAI破壊の標準的な物語を、少なくともここでは反転させている。

生産性データが語ること

同じ週のニュースの中に、マクロレベルのシグナルが潜んでいる。Financial Timesは報じた、2025年の米国の生産性は約2.7%上昇し、前の10年間の平均1.4%のほぼ倍になったと。生産性の向上は実在する。問題はそれがどこに現れているかだ。

AIが主にソフトウェアの堀を破壊していたなら、顧客が専門ツールを汎用AIに置き換えるにつれ、SaaS売上高の成長は減速するはずだ。いくつかのカテゴリーではそれが起きている。だがデザインツール——ビジュアル協働プラットフォーム——は加速している。Figmaの40%成長は同世代の多くを上回る速度だ。CanvaのARR40億ドルは、AIツールがデザインテンプレートを陳腐化させるはずだった同じ期間に達成された。数字は反論しない。

AIから生まれた生産性の向上は、これらのツールを迂回するのではなく、ツールを通じて流れている。デザイナーはAIのおかげでより生産的になり、その生産性をFigmaとCanvaの中で発揮している。流れは迂回しない——通過するのだ。

崩れる堀と崩れない堀

確定的なタスクを自動化するソフトウェアについては、LLMによる堀の破壊という論理は正しい。製品の価値提案が「我々はXのやり方を知っていてソフトウェアに落とし込んだ」であれば、Xを実行できるLLMはそのソフトウェアの価値を下げる。

しかし協働の場を提供するソフトウェアについては、この論理は間違いだ。こうしたツールが成功するのは、仕事を自動化するからではなく、人間が共同で意思決定を行う共有の場そのものだからだ。AIはその場へのインプットをより豊かで使いやすいものにする。場そのものを置き換えはしない。

崩れているのはワークフローの堀だ――「我々は手順を知っている」というものだ。維持されているのはコンテキストの堀だ――「みんながここで働いている」というものだ。Figmaの堀はデザインの方法を知っていることではない。すべてのデザイナーのチームがすでにFigmaにいることだ。Code to Canvasはその堀を浅くするのではなく、深くする。

協働の場となるツールは、AIがより多くの人を引き込むほど価値が高まる。タスクを自動化するツールは、AIがそのタスクを不要にするほど価値が下がる。

SaaSの清算は現実だ。だが崩壊ではなく選別だ。すべてのソフトウェア企業に問われる問いは「AIに置き換えられるか?」ではない。「我々はワークフローかワークスペースか?」だ。今週の数字が答えを出した——ワークスペースが勝っている。