10月18日、Google Quantum AIは、Willowでのマジック状態蒸留により、蒸留していない状態と比べてエラーを約40分の1に低減したと報告した。プロセッサーは目を見張る短時間のタスクを完了できても、長いアルゴリズムを実行するには多すぎるエラーを蓄積しかねない。

要点

  • Google Quantum AIは2026年10月18日、Willowのマジック状態蒸留が、蒸留していない状態と比べてエラーを約40分の1に低減したと報告した。
  • Googleの結果とともに引用された予測では、フォールトトレラントコンピューターの物理量子ビットのおよそ90%がT状態の生成に割り当てられる。
  • MicrosoftとQuantinuumは2024年4月、エラーのない実験が14,000回超に達したと報告し、2024年9月には12個の高信頼性論理量子ビットにまたがるエラー訂正計算を報告した。
  • QuEraの2024年ロードマップは、2026年までに10,000個の物理量子ビットから100個のエラー訂正論理量子ビットを実現する目標を掲げた。
  • IBMのStarlingロードマップは2029年のフォールトトレラントシステムを目標とし、Googleは耐量子計算機暗号への移行期限を2029年に定めた。

速度が示したのは到達点であり、耐久性の試験ではない

2019年、Googleは、当時のスーパーコンピューターなら10,000年以上かかる計算をSycamoreプロセッサーが3分20秒で完了したと発表した。Sycamoreの主張は、この分野に強力な実証目標を与えた。量子ハードウェアが、実用的な古典シミュレーションの範囲を超えるタスクを実行できることを示す、という目標である。

Sycamoreは、マシンがどれだけ多くの信頼できる演算を持続できるかを測ったものではない。Googleはアプリケーションを意識した速度比較を追求してきた。2025年には、WillowがQuantum Echoesアルゴリズムをスーパーコンピューターの13,000倍の速さで実行したとし、創薬と材料研究に位置付けた。この結果が測るのは特定のアルゴリズムの速度であり、いずれの用途にとっても実用的な価値を立証するものではない。

汎用計算には特殊状態の供給が必要だ

エラー訂正は量子情報を物理量子ビットに分散し、その構成要素にエラーが起きても論理量子ビットが生き残れるようにする。長時間にわたる汎用フォールトトレラントアルゴリズムには、保護された記憶だけでは足りない。汎用計算に必要だとGoogleが位置付けるT状態を含む、マジック状態と呼ばれる特別に準備された論理リソースを消費する演算も実行しなければならない。

Willowのマジック状態蒸留に関する報告でGoogleは、そうした状態のエラーを蒸留していない状態と比べて約40分の1に実験的に低減したとしている。発表に伴う説明では、T状態の生成がフォールトトレラントコンピューターの物理量子ビットのおよそ90%を消費しうるという予測が引用されている。これは予測上のリソース配分であり、Willowのマシン全体におけるオーバーヘッドの測定値ではない。

持続的なアルゴリズムのためには、エンジニアは、所定の論理エラー率と物理量子ビットコストで利用可能なT状態を生成するレートを必要とする。Googleの40分の1という結果は準備済み状態の品質を測るものであり、稼働するマシンがどれだけ供給できるかを示すものではない。

Googleの信頼性向上はまだ一本につながっていない

Googleの2024年のWillow発表は、改善された105個の物理量子ビットに、エラー訂正のマイルストーンとロードマップを組み合わせた。同じ時期にGoogle Quantum AIとDeepMindは、量子エラーの特定と訂正で既存手法を上回ったとする機械学習デコーダー、AlphaQubitを発表した。Willowは物理ハードウェアと符号化された信頼性に、AlphaQubitはエラーの特定に、蒸留は論理演算で消費されるリソースに対応する。

Googleの報告は、蒸留実験をAlphaQubitがデコードしたとは述べておらず、報告されたすべての改善が一つの長いアルゴリズム内で動作したことも示していない。これら別々の結果からは、訂正回路でデコーダーと蒸留済み状態が組み合わさった際にどう機能するかは未解決のままである。

競合各社は異なるコストを数えている

MicrosoftとQuantinuumは2024年4月、エラーなしの実験が14,000回超に達したと報告した。9月には、高信頼性の12個の論理量子ビットにまたがるエラー訂正計算を報告した。前者は限定された実験を数え、後者は保護された演算を試験する。どちらも大規模な汎用アルゴリズムの実行時間やリソースコストを明示していない。

QuEraは、物理量子ビットの在庫から目標とする論理出力への変換を明示した。同社の2024年ロードマップは、2026年までに10,000個の物理量子ビットから100個のエラー訂正論理量子ビットを実現することを目標にした。これは100対1という計画上の比率であり、実現済みの出力を測定したものではない。QuEraの比率は、計画された論理量子ビット当たりの物理量子ビット数を数える。Googleの結果とともに引用されたおよそ90%の予測は、T状態の生成に割り当てられるフォールトトレラントマシンの割合に関するものだ。両者は分母が異なる。組み合わせてもファクトリーの見積もりにはならない。

IBMのStarlingロードマップは、2029年のフォールトトレラントシステムを目標としている。Googleもまた、量子コンピューターの到達点は見かけより近いかもしれないとして、耐量子計算機暗号への移行期限を2029年に設定した。セキュリティチームが、それを破れるマシンが存在する前に脆弱な暗号を置き換えるのは合理的である。移行そのものに準備を要するためだ。同じ年を掲げていても、長い訂正アルゴリズムに必要な状態生成レートをどちらの企業がいつ実証するかは分からない。

よくある質問

Willowが達成したマジック状態の絶対エラー率はどの程度か?

報告された結果は相対値であり、蒸留していない状態よりエラーが約40分の1というものだ。提供された資料には、蒸留前後の絶対エラー率は示されていない。

GoogleはWillowの利用可能なT状態の生成レート、またはファクトリーの量子ビット占有規模を開示したか?

していない。資料は準備済み状態の品質向上を報告しているが、持続的な出力レート、その出力時の論理エラー率、あるいは稼働する状態ファクトリーの物理量子ビット占有規模は示していない。

Willowのマジック状態蒸留の結果について、独立した再現は確認されているか?

証拠資料は10月18日の結果をGoogle Quantum AIによるものとしている。外部による再現や独立した検証は特定していない。

QuEraが計画する物理量子ビットと論理量子ビットの100対1の比率は、マジック状態ファクトリーの見積もりか?

違う。QuEraの数字は、計画されたエラー訂正論理量子ビット当たりの物理量子ビット数に関するロードマップ目標であり、T状態の出力やマジック状態ファクトリーのリソース配分を測定したものではない。

報告済み・計画中のフォールトトレランス指標

組織日付数値何を数えるか
Google Quantum AI2026年10月18日エラーが約40分の1Willowにおける蒸留済みマジック状態と蒸留していない状態の比較
Googleが引用した業界予測2026年およそ90%T状態の生成に使われると予測される、フォールトトレラントマシンの物理量子ビットの割合
MicrosoftとQuantinuum2024年4月14,000超エラーなしと報告された実験
MicrosoftとQuantinuum2024年9月12エラー訂正計算に使われた高信頼性論理量子ビット
QuEra2024年ロードマップ、2026年目標10,000個の物理量子ビットから100個の論理量子ビット計画上の物理量子ビット対論理量子ビット比率100対1

Willowの約40分の1というエラー低減は、将来のマシンにおける高コスト部分を縮小できる可能性がある。その節約の規模は、訂正回路が動作する間にGoogleが利用可能な状態をどれだけ供給できるかを測定するまで分からない。